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アルツハイマー型認知症による国内コストは年間12.6兆円に及ぶ可能性

国内のアルツハイマー型認知症の医療や介護に要するコストは、家族による無償の介護を金額に換算した額を含めると、最大で年間12兆6000億円を超えるとの推計値が報告された。国際医療福祉大学医学部公衆衛生学の池田俊也氏らの研究によるもので、詳細は「Journal of Alzheimer's Disease」に3月23日掲載された。

アルツハイマー型認知症は、認知症の50~75%を占めるとされ、最も頻度の高いタイプの認知症。2015年には国際アルツハイマー病協会が、世界の認知症の有病者数は4680万人であり、医療や介護関連のコストは年間約90兆円という推計値を報告。国内でのコストに関しては2014年時点で14兆5000億円との報告がある。しかし、認知症の中でも有病者数の増加が特に顕著なアルツハイマー型認知症の医療・介護コストに焦点を当てた研究は少ない。池田氏らはこの点を明らかにするため、政府が公表しているデータに加え、文献検索により入手したデータを用いて詳細な分析を行った。

文献検索には、MEDLINE、医中誌Web、および厚生労働省研究費補助金制度のデータベースを活用。ヒットした3,364報から抽出された145報を基に、疫学、生活の質(quality of life;QOL)、疾病負担(burden of illness;BOI)、要介護や在宅介護の状況、生産性の低下などの実態を把握。その上で、公的データでは分からないインフォーマルな介護(家族などが無償で行う介護)のコストや、そのような介護に伴う生産性の低下などもコストに換算した。

コストの推計に必要なデータのうち、主要な項目は以下のとおり。アルツハイマー型認知症の有病者数は約360万人で、65歳以上の人口の10%。家族介護者は258万8,000人(男性72万1,000人、女性186万6,000人)で、そのうち介護による生産性への影響が高いと考えられる20~69歳は192万5,000人(男性48万1,000人、女性144万4,000人)。

検討したコストのうち、まず医療費については、アルツハイマー型認知症の治療薬が年間1508億円で、治療薬以外の医療費が9225億円、合計では1兆734億円だった。これをアルツハイマー型認知症の人の人数で割ると、1人当たり年間29万7,524円となった。次に公的介護費は、年間4兆7832億円であり、1人当たり132万5,862円だった。

続いて介護による家族の就労・家事労働での生産性の低下については、欠勤・時短勤務や就労時の能率低下も含めた総労働損失(overall work impairment;OWI)が9680億円、介護のための離職による損失が2535億円、家事労働の生産性低下(activity impairment;AI)により3255億円のコスト負担が発生していると見込まれ、これらを合計すると年間1兆5470億円、アルツハイマー型認知症の人1人当たりでは42万8,827円だった。家族が無償で行うインフォーマルな介護のコストは年間6兆7718億円、アルツハイマー型認知症の人1人当たり187万7,077円となった。

結論として、アルツハイマー型認知症の医療・介護に伴う年間コストは、介護者の生産性低下をコスト換算した場合、合計7兆4036億円、アルツハイマー型認知症の人1人当たり205万2,213円であり、介護者のインフォーマルな介護をコスト換算した場合、合計12兆6283億円、アルツハイマー型認知症の人1人当たり350万463円と推計された。

著者らは、「アルツハイマー型認知症関連コストは、日本の公的資金と家族に大きな影響を及ぼす。アルツハイマー型認知症に伴う経済的負担を最小限に抑えるために、健康寿命を延ばす取り組みが重要」と述べている。(HealthDay News 2021年5月17日)

Abstract/Full Text

https://content.iospress.com/articles/journal-of-alzheimers-disease/jad210075

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